密輸で得た違法所得はどう課税されるか
一、 事件経緯
某金属材料有限会社(以下、被告会社という)は違法利益を得るために、被告人(被告会社の法定代表)に海外サプライヤーと結託し、サプライヤーより供給された貨物に対する契約書、インボイス、船荷証券などの船積書類2セット(本物と偽造)を提供させ、被告会社は実際の成約した価格より低い偽の契約書、インボイス、船荷証券などを用いて代金を決算し、代金の差額部分を地下ルートで海外サプライヤーに支払った。
2009年8月から12月までの間、被告会社は上述の手段で前後8回にわたってK国及びM国などから亜鉛メッキ板、鉄スクラップなど材料合計200万㌧を輸入し、成約金額合計で761,404.26米ドル、税関に対しては正規価格より521,786.4米ドルを過少申告した。
税関は審査後、被告会社の行為は脱税に該当するとして333,822.49人民元の課税を確定し、且つ、被告会社に対し、2,887,200.35人民元の差し押さえを行った。
被告会社は関税の行政処分を不服とし、人民裁判所に税関を相手に行政訴訟を提起した。
二、 判決の旨
裁判所は被告会社の提訴を受理し、税関の課した行政処分について該当案件の関税価格の審査は法に合致せず、密輸査察局の発行した該当案件関税査定価格の関連書面だけを根拠として実質的審査をせず下した違法所得認定の判断は妥当ではなく、改正すべきと判決した。
三、 課税の見直し
密輸査察局は、裁判所から関税価格計算が間違っていると指摘を受けた後、裁判所に関税総価格の説明書を発行し、「税関输出入貨物関税価格査定弁法」により、
新たに関税価格を人民幣6,247,036.95元として見直した。
四、コメント
1、密輸犯罪活動を撲滅する為に、2002年7月8日、最高裁、最高検及び税関総署が「密輸刑事案件処理法律適用若干問題に関する意見」を連名で発布した。その第24条により、普通貨物、物品の密輸犯罪案件を取扱う際は、密輸貨物、物品が国内市場に流れ或いは使用されてしまい、密輸貨物、物品を差し押さえることができなく或いは差し押さえができなくなってしまった場合、密輸貨物、物品の輸出入関税価格によって違法所得を認定し、課税徴収しなければならないとしている。密輸貨物、物品の実際販売価格が関税価格より高い場合、実際販売価格によって違法所得を認定し、課税徴収しなければならない。
2、本案のように、価格を過小申告する手段を採用する密輸貨物は差し押さえられず、或いは差し押さえが不便であり、実際販売価格が関税価格より低い場合、密輸犯罪違法所得は関税価格によって認定すべきであり、過小申告価格と実際取引価格との差額でもなく、また過小申告価格と実際取引価格との差額部分と脱税した金額との簡単な合計額でもない。
3、本案の税関が発行した書類による関税価格の認定は法に合致せず、また密輸査察局の本案に関する関税価格査定のみを根拠として実質的な審査をせずに違法所得を認定した判断は妥当でない。
4、裁判所は、密輸貨物及びその貨物で得られた違法利益は全て没収すべきであり、関税価格は案件に係わるすべての貨物の関税価格を指し、認定上、案件に係わる貨物の総価格及び該当貨物によって得られる利益という二つの部分の価値が含まれると認めた。
※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。