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「多国間税収執行共助条約」の加盟について

 2013年8月27日に、中国政府は正式に「多国間税収執行共助条約」(以下、本条約という)に調印し56番目の加盟国となった。本稿では本条約の概要を以下の通り取り纏めてみます。

 

一、背景

 中国政府は、99カ国との間で二重課税防止協定及び租税交換協定を結んだ。今の制度では国際税収執行に対応できないが、本条約に参加すれば、多国間で構成する徴税ネットワークを生かし、国境を越えた課税逃れを摘発体制を強化することができると判断した。

 

二、税収執行協力

 本条約の締約国間において、(1)租税に関する情報の交換、(2)租税の滞納者の資産、銀行口座または支店が他の締約国にある場合、他の締約国にその租税の徴収、その財産の差止、差押または凍結の執行を依頼すること、(3)租税に関する文書の名宛人が他の締約国にいる場合、他の締約国にその文書の送達を依頼することに関して、相互に行政支援を行うことができる。

 

三、徴税範囲拡大

 本条約は二重課税防止協定及び租税交換協定が適用される所得税の税収執行範囲を超えて、締約国の中央政府或いは地方政府が徴税している、関税を除く諸税収、社会保険機構の社会保険料まで適用される。

 

四、海外進出支援

 本条約加盟後、中国会社は他の締約国に進出する際、自動的に協力的税環境の便宜を享受しやすくなる。同時に、中国の税務機関は本条約に基づいて二重課税防止協定及び租税交換協定を越える紛争を解決し、中国企業の海外進出の後押しをすることができる。

 

五、脱税行為阻止

 中国は今まで外国企業による隠蔽の脱税行為を査察したとしても、執行権が制限され、国境を超えた脱税行為に有効策を講じることができなかった。本条約加盟後、国際的な法的な枠組みから、あらゆる形の情報交換、徴税支援まで広範囲に及ぶセーフガードが提供され、脱税行為だけでなく、マネーロンダリングなど重大犯罪にも対処できる。

 また、従来は中国から海外に移した資産を中国当局が把握して、徴税するのは難しかったが、本条約加盟後、課税逃れを防止する国際協力の網を広げられる。

 

六、結び

 本条約の加盟に伴って、中国当局は加盟国間租税行政の協力を通じて、企業各社の租税回避や域外脱税などに如何に取り組むのか、そして国内実施の際にどのような法的な手当がなされるのか、また本条約署名にあわせて、徴税を代行する具体的な税の範囲をどのように定めるのかについても注目されるべきだろう。

 

七、新主要法令

法  律  名  称

施行日

1

中華人民共和国政府の「多国間税収執行共助条約」の加盟について『重要法規解説』をご参照下さい)

2013/08/27

2

国家外貨管理局の現行有効外貨管理主要法規目録(2013年7月31日まで締切)现行有效外汇管理主要法规目录(截至2013年7月31日)

 

2013/07/31

3

品質検験検査総局、税関総署の「出入国検験検疫機構の検験検疫を実施する輸出入商品目録」の公告

 

2013/08/01

4

国家税務総局の「増値税零税率適用納税サービス税還付(免除)管理弁法(暫行)の公布に関する公告

2013/08/01

5

国務院弁公庁の金融の小零細企業発展支持に関する実施意見

2013/08/08

6

税関総署の「中華人民共和国輸出入禁止物品表」及び「中華人民共和国輸出入制限物品表」関連問題に関する公告

2013/08/16

7

全国人民代表大会常務委員会は国務院を授権し中国(上海)自由貿易試験区で関連法律に決める行政審査批准の暫時調整に関する決定

2013/10/01

8

全国人民代表大会常務委員会の「中華人民共和国商標法」の改正に関する決定

2014/05/01