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中国内資企業の平均寿命はなぜ短いか

 2013年7月30日、中国国家工商総局企業の情報センターは全国内資企業生存期間分析報告(以下、報告という)を公布した。本稿ではその概要を以下の通り概説してみます。

一、 特徴

 報告は2000年以降の中国全国における新規企業、取消企業の生存期間等のデータを分析し、中国企業生存期間について6つの特徴を取り上げた。

1.5割近くの企業年齢は5年以下である。2012年末時点の中国の実在企業は1322.54万社、そのうち、企業寿命5年以下が652.77万社、5~10年が435.24万社、10年以上が234.52万社で、それぞれ、企業総数の49.4%、32.9%、17.7%を占める。

2.企業設立後の3~7年間は市場退去の高発期であり、企業生存期間の「ネック期間」でもある。

3.ここ5年間の市場退去の企業平均寿命は6.09年、そのうち5年以内の企業は6割近く、寿命1年以内(当年登録)の企業は退去企業総量の13.7%を占める。2008年初めから2012年末までの5年間の全国の市場退去企業は394.22万社に達した。

4.業種によって類型化ができる。平穏型(鉱山、水利、教育、ソフトなど)、競争型(飲食、不動産、サービスなど)、流動型(リース、卸小売など)、増長型(科学研究、文化、娯楽など)はそれぞれその業界の特徴を表している。

5.東部及び中西部各省における企業の生存危険期は、東部は設立3年目、中西部各省は3年目及び4年目に集中している。設立後3年目の企業の倒産数がもっとも多く、倒産率は最高に達した。

6.企業規模は大きいほど生存率は高くなる。企業生存率は登録規模と対比し、大企業は小企業より生存能力が強い。

二、私見

 中国企業の平均寿命は欧米日企業より遥かに短く、「一年発家(起業)、二年発財(蓄財)、三年倒産」の道を繰り返し、強く、大きく発展を遂げた企業はわずかである。その倒産原因は複雑であるが、以下のように考えられる。

1. 自己資金が賄えず、負債率が高く、債務返済の圧力が大きい。創業者は目先の利益ばかりに気を取られ、「一夜成金」の心理が働き、目標達成を急ぎ過ぎ、過大投資から資金ショートの泥沼に陷った。

2. 管理体制が未整備で、特に地方の企業では親族が要職を占め、最終的に親族間に軋轢が絶えず、事業が行き詰った。

3. 多角化投資に走り、無謀に事業拡張し、資源配置が追い付かなかった。

4. 輸出入政策の変更、為替変動等の政策的な要素に影響された。アパレル、玩具、ソーラー発電等輸出入頼りの中小企業は特にその傾向が強かった。

5. 多くの日用雑貨の製販企業は、製品の販路が明確でなく、物まねで独創が乏しく、感覚に頼りすぎ、経営が行き詰った。

6. 食品等ファーストフード及び使い捨て商品の業界では、与信が低く、品質保証がきちんとできず、粗悪品、贋物が横行した。

7. 企業文化が乏しく、従業員の忠誠度が低く、離職率が高い。技術開発型企業はその傾向が特に強い。

8. 産業チェーンの末端に位置し、川上の企業に頼り、交渉力が弱い。加工及び機械類企業はその傾向が特に強い。

9. 核心技術を持たず、ブランド力が弱い。レストラン業界がそれに当たる。

10. 天災人災の未然予防が難しい。ほぼすべての業種の企業が当てはまる。

 

※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。