茨城県上海事務所 > ビジネスリポート > 中国内陸都市レポート~湖南省長沙市編~

中国内陸都市レポート~湖南省長沙市編~

 2011年9月、湖南省長沙市を訪れる機会がありましたので、本稿は長沙についてご紹介します。

 長沙市は長江や洞庭湖の南岸に位置する湖南省の省都であり、春秋戦国期に楚の領地となったことから開発が進み、明代以降は中国有数の穀倉地帯となった。また、清朝末期から中華民国期にかけて多くの人材を輩出し、なかでも現代中国に最も影響を与えた人物である毛沢東(長沙の南、韶山)の出身地としても有名である。人口約700万人を有し、統計データによれば長沙の2010年の地域総生産額(GDP)は前年同期比15.5%増の4,547億元に達している。日中経済交流に携わっている中国人によると、2011年から日系企業(銀行、証券、建機、IT関連など)の視察調査団が増加し、長沙への関心が急速に高まっているとのことであった。また、レアメタルによる水質汚染対策として膨大な国家予算がつぎ込まれる予定とのことで、日系の環境関連企業も注目しているようだ。

中国中西部各都市 GDP 比較表
2010年GDP額(億元) 対前年比成長率(%)
湖南省長沙市 4,547 15.5
陜西省西安市 3,241 14.4
四川省成都市 5,551 15.0
※上海市(参考) 16,872 9.9

※「新華網」「天府早報」他より当所作成

 市内中心部を歩いてみると、大通り沿いには大型商業施設や高層ビル、ショッピングエリアが広がっており、想像以上に都会化が進んでいた。代表的な五一ショッピングエリアには王府井百貨や日系の平和堂百貨が出店しており、エリア内では高級ブランド品などの高額商品から中・低所得層の各消費者ニーズを満たす商品まで取り揃えられている。ことができる。一方で、一歩路地裏に足を踏み入れると、貧しさを感じさせる生活環境が広がっている。そうした路地をお洒落なファッションの若い女性が通り歩く様子は現在の長沙市を表現しているようでもあった。

 

 長沙に駐在する日本人によると、ここ1〜2年で急速に街の様子が変化してきているとのことで、「現在の長沙は一昔前の上海のようだ」と語っていた。交通量の増加とインフラの整備が急速に進み、中間所得層の増加によって購買力が増して商業施設が発展し街中が大変な賑わいを見せてきているということであり、実際に歩行者天国となっている黄興中路を歩いてみたが、まるで上海で最も賑わう南京東路のようであった。長沙駅前から続く五一大道では地下鉄の工事が進行中であり、交通渋滞緩和のためにいずれ上海のような高架道も建設されるかもしれない。所得増加という面では、飲食店スタッフの賃金月額が1,200〜1,500元となっており、単純作業を行う工場などでは、それと同額レベルで雇用するのは難しくなってきており、訪問した日系企業では、月額2,300元以上(福利厚生費含む)を支給しているとのことであった。

 現在、長沙市には大手日系企業が数社進出しており、日本人駐在員は140人程度であるが、来年日系自動車メーカーが合弁企業を立ち上げ予定とのことで、日本人が大幅に増加する可能性もあるようだ。いずれにしても急成長する中国内陸都市の一つとして、長沙市は今後も日系企業からの関心がますます高まるであろう。

市内中心部では地下鉄工事が進行中

市内中心部の開発予定地

賑わう黄興中路の歩行者天国

路地裏の様子