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企業の生産停止に関する法的手順について

 企業は、労働者の原因によらず、受注減などの理由で経営の不振に陥り、労働者に十分な仕事を手配できなくなり、やむを得ず、労働者への労働条件の提供を一時中止することを一方的に決定する場合に、どのような条件を備え、どういう手順を踏むべきかに関して以下の通り理解を深めていくことが必要です。

 

一.企業の生産停止の条件について

 企業の生産停止の条件は以下の通りである。

1.企業の生産停止は善意でなければならず、企業自体が不況や経営不振により、労働者に働かせることができない状況にあること。また、不況や経営不振については、企業側は証拠をもって証明しなければならないが、司法機関はその合理性について自由裁量をもって判断することができること。

2.企業は生産停止後に経営能力が回復する可能性があり、一定期間で経営を再開することができること。

3.生産停止期間中、企業は従業員の社会保険料を納付する能力があること。

 

二.企業の生産停止の手順について

 現在、企業の生産停止の手順については、法律上では明確な定めがないものの、労働者の利益に深く係わっているため、「労働契約法」第4条の「使用者は、労働者の切実な利益に係わる重大事項を決定する場合には、従業員代表大会又は従業員全員大会による討議を経て、方案及び意見を提出し、組合又は従業員代表と公平に協議することによって決定するものとする。」に合致しなければならない。

 

三.生産停止期間中の従業員の給与支給基準について

 労働部が1994年に公表した「賃金支払暫定規定」第12条は、「労働者の原因によらない生産停止は一つの賃金支給周期以内である場合は、使用者が労働契約に基づく給与を労働者に支払うものとする。一つの賃金支給周期を超えて、労働者が正常な労働を提供した場合は、地域の最低賃金を下回らない賃金を支払うものとする。労働者が正常な労働を提供しない場合は、国の関連規定により処理する」と定めているが、本条では、正常な労働を提供した従業員に支払う賃金の具体的な金額、及び正常な労働を提供しなかった従業員に如何に賃金を支払うかなどについては、いずれも明確に定められていない。

 各省は、労働部が公表した「賃金支払暫定規定」に基づいて、地域の賃金支払条例を策定する際、一般的に、企業の生産停止が一つの賃金支払周期を超えた場合の賃金基準に対し、労働者が正常な労働を提供したかどうかによって、具体的に定めている。「広東省賃金支払条例」第35条は以下の通りである。「労働者の原因によらず使用者に生産停止をもたらし、一つの賃金支払周期以内(30日を最長期間とする)である場合は、使用者は正常な勤務時間に基づく給与を支払うものとする。一つの賃金支払周期を超えた場合は、労働者が提供した労働に応じて、双方が再合意した基準により賃金を支払うものとする。使用者が労働者に仕事を手配しなかった場合は、労働者に地域の最低賃金の8割を下回らない賃金を生活費として、企業の生産回復、或いは労働関係の解除まで支払うものとする。」

  「北京市賃金支払規定」第27条は、「労働者の原因によらず生産停止をもたらした場合、一つの賃金支払周期以内である場合は、使用者は労働者が提供した正常な労働に基づく給与を支払うものとする。一つの賃金支払周期を超えた場合は、労働者が提供した労働に応じて、双方が再合意した基準により賃金を支払い、且つ地域の最低賃金を下回らないものとする。使用者が労働者に仕事を手配しなかった場合は、労働者に地域の最低賃金基準の7割を下回らない賃金を基本生活費として支払うものとする。国又は本市が別途に定める場合を除く」と定めている。

 

四.企業が生産停止後取るべき措置

 使用者は、従業員の勤務再開の為に、企業の早期の生産再開に向けた積極的な措置を取らなければならない。企業は経営を再開した後、従業員に既存の労働契約の履行を要求するか、双方の協議の上、新たな労働契約を締結し、双方の権利義務を決定しなければならない。企業が必要な措置を既に取ったものの、依然として従業員に正常な労働条件を提供し、生産を再開できない場合は、企業は法により従業員と既存の労働契約を解除又は終了させなければならない。

 

※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。