茨城県内企業の中国での取組み【応城市常興生態農業科技有限公司】
茨城県内中小企業の中国での事業展開についての取組みの1例を紹介します。
ソフトウェア開発等を営む常磐システムエンジニアリング株式会社(本社:土浦市)が出資する中国現地法人「応城市常興生態農業科技有限公司」が、日本貿易振興機構(ジェトロ)が発行する「Food & Agriculture」に『湖北省を拠点に循環型農業を目指す(中国)~IT企業が取り組む中国事業~』として紹介されました。
会社概要
会社名:応城市常興生態農業科技有限公司
住所:湖北省応城市城北長堰堤
業種:卸売業(肥料・農産物の製造・販売)ほか
董事長:岸根 満、総経理:唐克勤
電話:+86-21-712-3256066
メールアドレス:tang_keqin@tokiwa-sys.co.jp
【以下、ジェトロ記事の転載】
湖北省を拠点に循環型農業を目指す(中国)~IT企業が取り組む中国事業~
常磐システムエンジニアリング(株)(本社:茨城県土浦市)は、中国湖北省孝感市(応城)で、日本の微生物発酵技術を導入し、土壌改良のための肥料などを生産・販売する。茨城県の特産農産品である、①さつま芋、②かぼちゃ、③米を栽培し、独自の深掘経営スタイルで、中国湖北省を拠点に循環型農業の具現化を目指す。
①システム開発から農業へ
常磐システムエンジニアリング(株)は、本業をITコンサル、ソフトウェア開発を業務とする企業だ。11年9月、湖北省孝感応城市に、地元企業2社(応城市華興機床有限公司、応城浦和生態科技有限公司)と「応城市常興生態農業科技有限公司」を設立した。資本金1,000万元(約1億7,000万円)で51%を常磐システムエンジニアリング(株)が出資する。同社は、日本から微生物発酵技術、農産物生産技術を導入し、有機生菌肥料、生菌飼料添加剤、活性液、農作物の生産・販売、農地改良のコンサルティング業務を営む。
1981年に設立された常磐システムエンジニアリング(株)を33年間率いる代表取締役会長の岸根満氏は、自社の発展のため、IT業界以外で目に見える形で社会に貢献できる事業への展開を検討していた。一方、1991年東京大学の博士課程を修了後、日本でIT企業を経営していた唐克勤氏(応城市常興生態農業科技有限公司総経理)は、2007年に日本の会社を売却、故郷の中国に貢献できるビジネスができないか模索しており、2人はすぐに意気投合したという。
試行錯誤の結果、中国で成長が期待できる、「農業」、「新エネルギー」、「環境」の3つのカテゴリーに絞ってビジネスチャンスを探ったが、資金が限られる日本の中小企業にとってもっとも適していたのが「農業」事業との結論に至った。岸根氏は、「農業とITは全く違った分野であるが、農業とITとを上手く組合せ、融合できないかを検討したい。そのためには、農業を理解し、ビジネス化しなければならない。日本の技術を中国という大きな市場で活かし、Win-Winのビジネススタイルを構築したい」と語る。
②中国に“循環型農業”が必要な理由‐
中国中央テレビ(CCTV)は「世界の農地面積に占める中国の農地面積は10%に満たないのにもかかわらず、世界で使用されている化学肥料使用量の40%近くを使用しており、単位当たりの使用量は世界平均の2.5倍になる」と伝えている。
唐克勤総経理は「健康な土壌には土壌菌が生息しているが、過度な農薬・化学肥料を使用することで、土壌菌は死滅する」と指摘する。土壌の免疫力が落ち、作物は育ちにくく、腐りやすくなるため、害虫被害を受けやすい。これを防ぐため、農家は更に大量の農薬や化学肥料を使用する。この悪循環が中国全土で蔓延する。「私は中国の各地を回ったが、訪れた先でミミズやカエルを見たことがない。1960年代の中国ではありえなかった。農薬と化学肥料の悪循環によって現在の中国の農地は土本来の力を発揮する能力が失われている」(唐克勤総経理)。
循環型農業は、レストランや畜産、農業から出る有機廃棄物(生ゴミ)を微生物で発酵して生産する生菌肥料を土に返し、農作物を栽培する。同社では、約666㎡(中国単位1ム-)の農地に生菌肥料200㎏を作物栽培時に使用することで、化学肥料の使用量を約半分から3分の2まで減らすことができ、農薬も半分以下に抑えることができる。3年間続ければ、土壌はかなり改良されるという。
唐克勤総経理によれば、中国の一般農家には、「農業は土壌からつくるという発想が定着していない」という。実際、この事業のパートナーを探すために、中国各地を走り回ったが、「農業は土壌からつくる」という思想に共感してくれる会社にはなかなか出会うことができなかった」と過去を振返る。合弁先である華興機床公司は、湖北省孝感市にある工作機械メーカーで微生物発酵機を製造することができること、また、豚、鶏などを養殖する事業があり、堆肥となる家畜の糞尿を容易に手に入れることができることが、パートナー選びの決め手となった。しかし、「何よりも農業は土作りからという考えに共感してくれたことが大きかった」(唐克勤総経理)と語る。
同社売上(2013年)は、約100万元(約1,700万円)、売上の80%が有機生菌肥料(約400トン)で、湖北省内のブドウ園や海南島のメロン農園など、付加価値が高いフルーツの栽培に使用されているという。また、家畜の栄養剤として使われる生菌飼料添加剤、活性液は、2014年内に販売を開始できるよう準備を進めており、今後、土壌改良コンサル事業の一環として、微生物発酵機の販売にも取組む予定だ。
③中国産の茨城野菜を中国全土に
応城市常興生態農業科技有限公司は、現在、少量の地元野菜と日本の米、カボチャを生産販売している。当初は、地元野菜は多く生産していたが、市場価格に左右されるため、自社にしかできない茨城の特産品である農作物をつくることに決めたという。現在、中国産の茨城野菜を、日系スーパー中心に営業をはじめている一方で、上海や広州、成都近辺で、土壌改良を行い、2~3年後には農作物を栽培できる体制も進める。「物流コスト、消費地までの鮮度、一地域での生産量には限りがあり、地産地消が欠かせない。われわれの作る農作物、技術を中国全土に展開し、中国の土壌改善を推進したい」と唐総経理の夢は膨らむ。
出典:ジェトロ農林水産情報研究会会員向け情報誌「Food & Agriculture」”
掲載日(No.2986、2014年5月5日号)
ジェトロ農林水産情報研究会 http://www.jetro.go.jp/members/food/