「最高人民法院の労災保険行政案件の審理に関する若干問題についての規定」の解釈について
最高人民法院は、「最高人民法院の労災保険行政案件の審理に関する若干問題についての規定」(以下、「規定」という)を公布し、2014年9月1日より施行した。ここに「規定」の内容について、以下の通り取り纏めてみます。
一.背景
2011年1月1日改訂版の「労災保険条例」が実施されてから、労災保険行政の案件数は大幅に増加し、労災案件の審判において判断し難い問題も多く、解決の難易度がますます高まっている。その行政紛争を善処し、司法の尺度を統一する為に、最高裁は「規定」を公布した。
二.労働関係認定
「規定」第三条により、社会保険行政部門が以下の単位(「単位」とは、機関、団体、事業体や勤務先、所属先を指す、以下同じ)を労災保険責任を負う単位と認定する。
(一)従業員が2社或いは2社以上の単位と労働関係を形成して労災事故に遭った場合は、従業員が勤務している単位を労災保険責任を負う単位とする。
(二)労務派遣単位より派遣された従業員が派遣先で仕事により死傷した場合、派遣元単位を労災保険責任を負う単位とする。
(三)単位より他の単位への出向を命じられる従業員が業務上の原因により死傷した場合、出向元を労災保険責任を負う単位とする。
(四)使用単位が法律、法規に違反して請け負った業務を使用単位の主体資格を有していない組織或いは自然人に下請として発注し、当該組織或いは自然人が招聘した従業員が請負業務に従事したことにより死傷した場合、使用単位を労災保険責任を負う単位とする。
(五)個人が他の単位に間借りし、対外事業を行い、その個人が招聘した従業員が業務上の原因により死傷した場合、その間借りされた単位を労災保険責任を負う単位とする。
上記の(四)、(五)に定めた労災保険責任を負う単位は、賠償責任を果たし、または社会保険機構が労災保険基金から労災保険を支払った後、関連組織、単位または個人に賠償を追及する権利を有する。
三.労災認定の条件
「規定」第四条により、社会保険行政部門が以下の状況を労災と認定する。
(一)従業員が勤務時間に勤務場所で傷害を受けた場合は、使用単位或いは社会保険行政部門が、非業務上の原因であると証明できない場合。
(二)従業員が、使用単位が組織した或いは使用単位の指示に従い、他の企業の活動に参加した際に傷害を受けた場合。
(三)勤務時間内に、従業員がその業務職責に関わる複数の勤務場所の間を往来した合理的な区域において業務上の原因により傷害を受けた場合。
(四)その他の業務職責に関わり、勤務時間中及び合理的な区域内で傷害を受けた場合。
四.業務による外出期間の認定
「規定」第五条により、社会保険行政部門が以下の状況を「業務による外出期間」と認定する。
(一)従業員が、使用単位の指示に従い或いは業務により勤務場所以外に業務職責に関わる活動に従事する期間中。
(二)従業員が、使用単位の指示に従い社外で研修或いは会議に参加する期間中。
(三)従業員が、業務によりその他の社外活動に参加する期間中。
五.通勤ルートの認定
「規定」第六条により、社会保険行政部門が以下の状況を「通勤ルート」と認定する。
(一)合理的時間内に勤務地と居住地、経常居住地、単位宿舎との間を往復する合理的勤務ルート。
(二)合理的時間内に勤務地と配偶者、父母、子の居住地との間を往復する合理的勤務ルート。
(三)日常的な仕事と生活に必要な活動に従事するための合理的時間と合理的勤務ルート。
(四)合理的時間内のその他の合理的通勤ルート
六.コメント
1.「規定」第六条の(二)について、実際には各ケースの状況は千差万別であり、その合理性を如何に判断するか、誰が決定するか、曖昧なルールは司法上に過大な自由裁量を与える恐れがある。
2.「規定」第六条の(三)について、通常の帰宅時間より遅く帰宅した場合には、どう認定すべきか。
3.「規定」が「合理的時間」と「合理的ルート」と定めても、社会のすべての事象を網羅することは不可能である。裁判所は労災各案に当たり「合理性」法則の司法経験を積み重ね、全国範囲内の同一案件同一判決を実現することを確保できるか注目したい。
№ |
法 律 名 称 |
施行日 |
1 |
最高人民法院の「最高人民法院の労災保険行政案件の審理に関する若干問題についての規定」 |
2014/09/01 |
2 |
国家税務総局の新版増値税領収書の使用関連問題に関する公告 |
2014/08/01 |
3 |
税関総署の国境を跨る貿易電子商務の貨物・物品の輸出入の監督事項に関する公告 |
2014/08/01 |
4 |
国家食品薬品監督管理総局の医療器械登録管理弁法 |
2014/10/01 |
5 |
国家税務総局の「重大税収違法案件情報公布弁法(試行)」の配布に関する公告 |
2014/10/01 |
6 |
国家税務総局の「納税信用管理弁法(試行)」の配布に関する公告 |
2014/10/01 |
※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。