物上保証人の責任は免れるか -抵当権の設定を約束しながら、抵当権設定登記を拒んだケース-
事実経緯
- 2009年10月10日、A社はB銀行と返済期間を6カ月間とする100万元のローン契約を締結した。翌日、B銀行よりその融資を保全する為に財産抵当の設定を求められたA社はC社に相談した。
- 10月15日、C社はB銀行と抵当権設定契約を締結し、C社の所有する工場建物1棟に対して、A社とB銀行との間で締結した100万元のロ-ン契約を保全する為に担保権を設定することを約束した。
- 10月16日、B銀行がA社に100万元を融資した後、C社は抵当権設定登記を 拒んだ。
- A社はローン契約の期限満了後も元本と利息を返済できなかったため、B銀行はA社及びC社を被告として裁判所に提訴した。
審理結果
- 裁判所は、B銀行の請求を審理し、A社がB銀行に100万元及び利息を返済し、C社がその所有する工場建物1棟の価値の範囲内において、A社の返済不能の部分に対して賠償責任を負うよう判決を下した。
- 一審判決後、C社は判決を不服として上訴し、B銀行とは抵当権設定登記手続きをしなかったこと、そのため効力は生じていないことを理由にその責任は負わないと主張した。
- 二審は、審理後、原判決を維持しC社の上訴を退けた。
ポイント
- 抵当権設定契約の締結は担保物権設定の原因行為であり、「契約法」の範畴に属し、抵当権設定契約の成立及び発効は「契約法」の関係規定に合致しなければならない。本案に関わる契約は主体性および内容ともに法律規定に合致し、法によって成立した契約である。
「担保法」第四十一条及び第四十二条の規定に基づいて、C社はその工場建物1棟に抵当権設定登記をすべきであり、抵当権設定契約は登記した日より発効するものとする。 - 抵当権設定契約が発効しなくても物上担保人は責任を免れることにはならない。「契約法」第四十二条の規定により、当事者は契約の締結過程において、信義誠実原則に違 反して相手に損失を与えた場合、損害賠償責任を負わなければならないとする。
本案のC社は、B銀行に対し信頼に基づく締結行為を裏切り、契約上の「積極的義務」に違反し、B銀行が損失に到った場合、その契約締結に対して過失責任を負うべきものである。 - 最高裁の『「担保法」適用に関する若干問題の解釈』第五十六条第二項では、法律に抵当権設定契約の締結後、物上担保人が信義誠実原則に違反して抵当権設定登記を拒否し抵当権者に損失を齎した場合、物上担保人は賠償責任を負うべきであるとしている。
従って、C社は抵当価値の範囲内でA社の返済不能の部分に対して賠償責任を負うものとした裁判所の判決は、「契約法」、「担保法」及びその解釈の規定に合致したものである。
※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事です。