自己の弁護士費用を相手方に負担させることができるか
一.担保借金請求事件
事実経緯:
販売代理業者であるA氏は、B社に20万元の商品を提供した。B社は3ヶ月以内に返済する旨の借用書を差し入れ、かつC氏が連帯保証をした。返済期限を過ぎ、A氏の催促にも応じず、返済しなかった。
A氏は、訴訟で解決しようとしたが、弁護士費用が最低でも12,000元かかることが分かり、元々利益も薄く、勝訴しても、お金をロスする可能性があることを考え、訴訟を諦めようとした。
コメント:
A氏は、弁護士費用の基準に基づいて先に委託した弁護士費用を立て替え、その後当該費用を訴訟請求額に追加し、裁判所にB社及びC氏に負担させるよう請求することができる。
「担保法」第21条において、保証担保の範囲に主債権及びその利息、違約金、損害賠償金及び債権を実現するための費用を含むとし、保証契約に別段の約定がある場合は約定に従い、当事者が保証担保の範囲について約定せず又は約定が明確ではない場合は、保証人は全ての債務に対して責任を負うものと規定している。ここでいう「債権を実現するための費用」には弁護士費用が含まれる。
二.取消権行使案件
事実経緯:
D氏は、E氏から50万元を借りたが、返済期限が過ぎ、E氏の再三に亘る催促にも応じず、資金がないことを理由に債務返済を拒否し、D氏の親族に自社の機械設備を無料で譲渡したり、製品を低価格で売却することによってE氏の債権回収の実現に損害を与えることになった。
E氏は取消権訴訟を提起しようとしたが、巨額の弁護士費用を考え躊躇した。
コメント:
「契約法」第74条第2項には、債権者が取消権を行使する際に必要な費用は債務者が負担すると規定している。また、「最高裁の契約法の適用における若干の問題に関する解釈(一)」第26条に基づき、債権者が取消権を行使する際に支払った弁護士費用、出張代等の必要な費用は債務者が負担する。第三者に過失がある場合には、第三者にも負担させることができると定めている。故に、E氏は、弁護士に依頼し、D氏とD氏の親族をに対し取消権訴訟を提起し、且つ裁判所に対してD氏らに弁護士費用を負担させるよう請求することができる。
三.不正競争行為責任追及案件
事実経緯:
豆腐を生産する会社(以下、F社いう)はその製品品質及びサービスの良さで地元での知名度が高い。ある時、顧客がカビの生えた製品を証拠としてクレームを付けてきた。調査の結果、F社の社名を盗用して勝手に同様の製品を生産した会社があることが判明したが、確固たる証拠を入手するには高額な調査費用がかかるため、どうするべきか迷った。
コメント:
「反不正競争法」第20条は、事業者は本法に違反して他の事業者に損害を与えた場合、損害賠償責任を負わなければならないと規定している。被害を受けた事業者に対する損失の算出が困難である場合は、賠償額は侵害者が侵害期間に侵害行為により得た利潤とする。また、被害を受けた事業者が自社の合法的な権益を侵害した当該事業者の不正競争行為を調査するために支出した合理的な費用を負担しなければならない。ここでいう合理的な調査費用には、弁護士が証拠を収集する際の費用が含まれる。
上記調査費用のほか、「著作権法」や「特許法」等には不正競争行為を制止するための合理的な支出を相手方に負担させることができると明記されている。
「著作権法」第49条は、著作権等を侵害する場合は、権利侵害者は権利者の実質的損失に基づいて損害賠償しなければならないと規定している。実質的損失の算出が困難である場合には、権利侵害者の違法所得に応じて損害賠償を行うことができる。賠償額には、権利者が権利侵害行為を制止するために支払った合理的支出を含めるものとする。
また、「最高裁の著作権民事紛争案件の審理における法律適用に関する若干の問題についての解釈」第26条に基づき、侵害行為を制止するために支払った合理的支出とは、権利者又はその委託代理人が侵害行為に対し証拠を調査し、証拠を集めるための合理的費用をいう。人民法院は当事者の訴訟請求及び事件の具体的状況に応じて、国家関係部門の規定に合致する弁護士費用を賠償範囲内に計上することができる。
更に、「最高裁の特許紛争案件審理の法律適用問題に関する若干規定」第22条には、権利者が権利侵害行為を差止めるために支払った合理的支出を主張するとき、人民法院は特許法第65条に定める賠償金額以外に別途計算することができると規定している。
※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。