自動退職と契約解除との違いについて
1、自動退職と契約解除の違い
1993年6月28日労働部弁公庁労弁発の「勝手に退職する従業員への企業による処理問題に関する回復」の規定に基づき、自動退職とは、労働者は労働関係を終了させる際に、解除手続を行わないままに職場を離れ、又は解除手続き完了までに会社を辞めることを指す。例えば、従業員は自分の退職申請に許可を得ずに勝手に職場を離れ、理由を説明しないまま会社を辞める、又は厚遇のために勝手に転職を決める等の場合は自動退職に当たる。
(1)自動退職と従業員による一方的な労働契約解除との違い
労働契約法第37条に定める状況があった場合、従業員は予告解除や即時解除の権利を有する。また、同法第38条第2項に基づき、使用者が暴力、威嚇又は違法に人身の自由を制限する手段により労働者に労働を強制した場合、又は使用者が規則に違反し、労働者の人身の安全を脅かす危険作業を指示、強要した場合は、労働者は直ちに労働契約を解除することができ、使用者に事前に告知する必要はない。 但し、自動退職が上記事前告知を必要としない状況に合致しないことによって雇用者に損失を与えた場合は、従業員は労働契約法第90条に基づき相応の賠償責任を負わなければならない。
(2)自動退職と雇用者による一方的な労働契約解除との違い
従業員が自動退職をした場合、労使双方の労働関係が既に終了したかどうかは明確ではないため、雇用者がその辞職を労働契約解除の事由とするのは困難であり、実務に於いて多くの雇用者は自動退職を理由に労働契約解除を決定する。
(3)自動退職と労使双方の合意による労働契約解除との違い
労働契約法第36条に基づき、雇用者と従業員は協議による合意の上労働契約を解除することができる。双方行為として従業員と雇用者はいずれも労働契約解除を主張することができ、双方は合意に達した場合、労働契約を解除することができる。従って、双方が協議の上労働契約を解除できるのは労使間での合意を前提としなければならない。しかし、従業員の自動退職も雇用者より自動退職と見なされる行為も双方合意による労働契約解除に属しない。
故に、自動退職の場合は必ず法的効力を有するとは限らない。自動退職が法定状況に合致しない場合、従業員による労働契約違法解除行為として、雇用者は法律規定に基づいて従業員に対し賠償責任を要求する権利を有する。雇用者は従業員の自動退職を理由に労働契約解除を決定するのは雇用者による一方的な労働契約解除に当たる。
2、自動退職の認定と処理について
従業員による自動退職が労働契約法第38条第2項に合致した場合、同法第46条の規定に基づき雇用者に対し経済補償金の支払いを要求することができる。
従業員が自動退職をする際に労働契約法第38条第2項に定める事由を労働契約解除の根拠としなかった場合、その自動退職は本人の原因による退職と見なされており、従業員は一方的に労働契約を解除した場合は雇用者に対し経済補償金の支払いを請求することができない。
司法実務上、自動退職と見なされた従業員を解雇するのは主に次の通りである。
①体調不良や業務能力、コミュニケーションの欠乏、引っ越しなどの従業員本人の
原因で会社に告知しないまま仕事を辞めること
②従業員が正当な理由なく無断欠勤して一定の日数に達すること
③従業員が出国後期限を過ぎても帰国しないこと
上記行為を認定する際に、下記の三つの事項に注意が必要である。
(1)自動退職事実の確認
従業員の自動退職を認定する際に、下記の三つの点に注意を払わなければならない。
①従業員は会社を辞めて一定期間において元会社に戻るつもりがない。
②関連手続を履行しないまま又は関連手続を履行したが、会社の許可は得られない。
③規定する期限を過ぎる。
最高人民法院の「民事訴訟証拠に関する若干規定」第6条及び「労働争議案件審理における法律適用に関する若干問題の解釈」第13条に基づき、雇用者による解雇、除名、辞退、労働契約解除、労働報酬減額、労働者勤続年数計算等の決定によって発生した労働争議について、雇用者は挙証責任を負う。故に、管理者としての雇用者は従業員の自動退職について挙証責任を負わなければならない。
例えば、江蘇省高級人民法院の「労働人事争議案件審理に関する指導意見(二)」第14条に基づき、労働者が雇用者に口頭で解雇されると主張し、雇用者が労働者による自動退職を主張した場合、雇用者は労働者による自動退職について挙証責任を負う。雇用者が関連証拠を提供できなかった場合、自分に不利な結果を負担する。従って、雇用者は完備な出勤表の作成を通じて、従業員が正当な理由なき出勤しない事実を証明することができる。
(2)雇用者による労働契約解除の合法性についての審査
従業員が社内規則に従い休暇手続を履行せずに正当な理由なき勝手に職場を離れた場合、雇用者は、社内規則に基づいて自動退職を理由に当該従業員との労働契約を一方的に解除することができるが、労働契約解除の根拠となる社内規則の合法性についても審査しなければならない。また、雇用者はその労働契約解除決定を労働組合に通知し、且つ従業員本人に送達しなければならない。
(3)労働者権益保護と雇用者権益保護の両立
雇用者が労働者の違法行為を理由に労働契約解除を決定した場合、雇用者の挙証責任を強化するとともに、雇用者への損失拡大を防止して雇用安定を守らなければならない。厳重に労働規律に違反した労働者に対して、雇用者は労働法第25条第2項に基づいて労働契約を解除することができる。例えば、「浙江省高級人民法院民一庭の労働争議案件審理における若干問題に関する意見」第45条には、従業員が正当な理由なき休暇手続を履行しないまま勝手に職場を離れて連続で15日以上に達した際に、社内規則に関連規定があった場合は当該規定により執行する。社内規則に関連規定がなかった場合は雇用者は従業員が厳重に労働規律に違反することを理由に労働契約を解除することができる。
以 上
※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。