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契約の不履行で別件提訴できるか

 

一、事実関係

1、2007年にA社とB社の間でB社がA社に総額1300万人民元の鋼材を供給し、A社がまず150万人民元の手付金を支払うという売買契約が締結された。

2、A社は約定通りに履行したが、B社は鋼材を供給しなかったため、A社は人民法院に提訴した。人民法院は、Bに対し判決の発効後1ヶ月以内に履行を完了するよう命じた。

3、判決の発効後、A社は執行を申請し、人民法院は執行通知を出したが、B社はその執行をなお拒否し、さらに当該種類の鋼材は外国から輸入しなければならないことを理由に、事実上の履行能力を失っていると明確に表明した。

4、A社は2008年8月に人民法院に提訴し、契約の解除及び損害賠償を求めた。

 

二、争点

 既にB社に契約の継続履行を命じる判決が下されている状態で、B社が履行不能を明確に表明し、しかも履行を強制できないとき、A社は別件提訴によって契約の解除を求めることができるかどうか。

 

三、判決の主旨

  人民法院は、契約の解除及びB社からA社への損害賠償を認める判決を下した。

 

四、法律適用

1、《中華人民共和国民事訴訟法》第231条の規定により、判決・裁定あるいはその他の法律文書が指定した行為を、被執行人が履行通知の通りに履行しないときは、人民法院は強制執行をすることができ、あるいは関係単位もしくはその他の人に委託して履行を完了させることができ、費用は被執行人が負担するものと定められている。

2、《最高人民法院の《中華人民共和国民事訴訟法》の適用に関する若干意見》第275条の規定により、被執行人は、判決・裁定もしくはその他の法律文書の指定する履行期限内に非金銭的給付義務を履行しないとき、執行申請人に被害を既に与えたか否かを問わず、等しく履行遅滞金を支払うべきである。

 

五、コメント

 本案の別件提訴は、民事訴訟法の“一事不再理(1つの事件を2度審理しない)”という原則に違反するものではない。なぜなら、この原則は、同一の訴訟原因に基づいている場合、即ち同一の法律関係に端を発するものについて適用する原則であるからである。本案のように、A社の1回目の提訴は、双方当事者の契約履行に対峙して提起したものである。A社の1回目の提訴の判決が発効した後、B社の契約を継続履行する能力は既に喪失しており、たとえ人民法院の強制執行によっても債権目的が実現できない状態となっていた。しかも、法定免責事由がない。これによりB社は新たに違約したことになる。この時点で、A社が契約解除を提示し、B社に違約責任と損害賠償を負うよう求めたので、既判決の訴えとは異なる別の法律関係が形成された。従って、A社の計2回の提訴は、同一の訴訟原因に基づくものではない。人民法院が受理した後、契約を解除し、A社の損害を賠償するようB社に求める2回目の判決は、“一事不再理”の原則に反するものではない。

以 上

※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。