盗撮ビデオ映像は証拠として有効か?
1.事実経緯
李氏は1997年に王氏と知り合い、間もなく1998年2月に結婚した。結婚後、王氏は 無職だけでなく、妊娠も出来なかった。李氏は夫婦生活の面白さを感じられないため、不倫に落ちた。
2004年3月、李氏は裁判所に提訴し、離婚して夫婦の共有財産を分割するよう請求した。審理において、双方は結婚前の財産や結婚後の共有財産について異議がなかったが、王氏の弁護士は、王氏が「李氏が配偶者を有する者でありながら他人と同棲したこと」を立証するため探偵に盗撮してもらったビデオ映像を裁判所に提出した。李氏の弁護士は同証拠の合法性について異議を申し立てた。
2.裁判判決
本案の焦点は被告の王氏が提出した盗撮映像の証拠能力に係るものである。証拠の基本特徴としての客観性と関連性については双方に異議がないが、合法性については争われていた。証拠の合法性とは、訴訟証拠が法的手続きによって得られた事実資料でなければならないことを指す。
本件における李氏が配偶者を有する者でありながら他人と同棲したことは法律上の守るべき合法的権益を有せず、当該映像が第三者のプライバシーには関わったが、第三者のプライバシーを侵害するために作成したのではなく、配偶権を守るために他人のプライバシーに関わらざるを得なかったものである。また、当該証拠には編集、合成、改ざん及びでっち上げがなく、善良な風習に背ける手段を取って得られたものではなく、証拠禁止にも当たらない。
最高裁の2001年12月付「民事訴訟証拠の若干問題に関する規定」(以下、「規定」という)第70条第3項に基づき、被告の証拠収集手段が原告の許可を得られないが、原告の合法的権益を侵害しない証拠は証拠としての合法性に合致するので、事実経緯を認定できる証拠と認められる。
本案において、双方は裁判所の調解を経て離婚合意に達し、李氏は過失のない王氏に適当な財産補償を行った。
コメント
近年、ビデオ映像は視聴覚資料として良く使われているため、当事者がプライベートで撮影したビデオ映像は証拠として認められるか否かについて争われている。
プライベートで撮影したビデオの合法性について、最高裁の1995年3月付「相手方の当事者の許可なくプライベートで録音した会話は証拠として使われてはならないことに関する返答」に基づき、証拠収集が合法的でなければならず、合法的手段で得られた証拠だけが事実経緯を証明できる証拠と認められる。相手方の当事者の許可なくプライベートでその会話を録音することは不法行為であり、同手段を取って得られた録音資料は証拠として使われてはならない。しかし、利害関係を有する当事者双方が自分に不利な証拠を相手方に作成させるのはあり得ず、齟齬が生じる。
最高裁の「規定」に基づき、他人の合法的権益を侵害する又は法律上の禁止性規定に違反する方法で入手した証拠は、事実経緯を認定できる根拠とならない(第68条)。他の証拠をもって証左できる、合法的手段で入手した、疑問のない視聴覚資料又は視聴覚資料と照合して合致するコピーは、相手方の当事者が異議を申し立てたが、反論するに足りる反対の証拠がない場合、裁判所はその証拠能力を認めなければならない(第70条第3項)。
上記「規定」は証拠の合法性の判断基準について「他人の合法的権益を侵害するか否か」等を基準として判断すると定めたが、具体的な適用においては裁判官は、自由裁量権をもって判断することができる。本件における李氏が配偶者を有する者でありながら他人と同棲したことは法律上の合法的権益を有せず、当該映像が第三者のプライバシーには関わったが、第三者のプライバシーを侵害するために作成したのではなく、配偶権を守るために他人のプライバシーに関わらざるを得なかったものである。また、「法律上の禁止性規定に違反する」そのものは曖昧であり、法律上のある具体的行為に対する具体的規制に違反することを指すか、それとも各基本原則を含む規制に違反することを指すかは不透明である。
王氏が探偵に盗撮してもらった行為そのものは法律上の合法的証拠収集方法ではないが、当該証拠には編集、合成、改ざん及びでっち上げがなく、善良な風習にだけ背ける手段を取って得られたものでさえあれば、法律上の禁止性規定に違反しないと認められる。
4.証拠収集する場合の注意事項
司法実践において、「盗撮ビデオ映像」を収集する必要がどうしてもある場合には、下記の三つの点を把握するよう注意しなければならない。①案件の性質と社会に対する危険程度、②当事者の行為の不法若しくは不当性の程度、③プライベートで撮影する行為の原因、条件、主観的過失等。
下記のいずれかに該当する場合、プライベートで撮影したビデオ映像は証拠として認められる。①当事者の一方が相手方の許可なくプライベートで撮影したが、利害関係を有しない方が現場にいって盗撮過程の真実性を証明できる場合、証拠と認められること、②盗撮の対象者が盗撮のことを知らないが、その後当該事実を知って許可を与えた場合、証拠と認められること、③ビデオ映像は鑑定を経て編集、合成、改ざん及びでっち上げがないと認められ、かつ他の証拠をもって証左できる場合、その証拠能力を認める。
以 上
※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。