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信用状はなぜ取り扱われないか

争 点

 会社が信用状を処理する際の注意事項は何か。

事実関係

1、中国のA社は、海外のB社との間に布の売買契約を締結し、双方はCIF価格を条件に信用状方式で決済することを約定した。

2、契約締結後、B社は約定に従って信用状を開設した。当該信用状の規定によると、A社の出荷量は「約50,000ヤード」であり、A社がWA(分損担保)とWAR RISK(戦争保険)を付保して保険証券を提示するという条件であった。商習慣として、A社は同種の商品を輸出するときは常に、ALL RISKS(全危険担保)および戦争保険を付保していた。このため、詳細なところまでよく審査しないまま、A社は全危険担保と戦争保険を付保した。A社は荷積みした後、銀行に関連書類を提出して支払を求めた。銀行は関連書類を審査した後、関連書類と信用状が合致しないことを理由に、支払を拒否した。銀行が挙げた不一致の理由は次の2つであった。

(1)保険証書に示された付保の種類と信用状の規定が一致しない。

(2)船荷証券においては、A社が船積みする貨物の出荷量が44,800ヤードであると明記されており、信用状に記載の「約50,000ヤード」と一致しない。

 A社は、全危険担保の付保範囲が分損担保より広いので買い手に有利であり、しかも、貨物の量についても、信用状には「約50,000ヤード」と規定されていて具体的な増減幅を定めていないことを理由に、船荷証券の44,800ヤードという数量はこの信用状の規定にも当てはまり、違反していないと主張した。

審理結果

 銀行は、再度船積書類を審査して、なおも信用状と関連書類が合致しないと認識したことに至り、支払を拒否するものとした。

法律適用

1、《信用状統一規則》(UCP600)第14条の規定により、銀行は、合理的かつ慎重に信用状にかかわるすべての船積書類を審査して、それらが信用状の条項と文面上にて一致しているかどうかを確認しなければならない。規定の船積書類が信用状の条項と文面上にて一致するかどうかは、これらの条文に反映されている国際標準銀行慣例に基づいて確定すべきである。船積書類の文面上が一致しない場合は、信用状条項と文面上一致するとみなしてはならない。

本事案において、A社が付保したものは全危険担保と戦争保険であり、信用状が要求しているのは分損担保と戦争保険であった。確かに付保範囲は分損担保より幅広く、買い手に有利ではあるが、銀行が関連書類を審査するときは船荷証券の文面が信用状と合致しているかどうかを審査するのみであり、当事者の権利義務について一切関与しない。銀行はA社が提出した保険証券の保険種類が信用状の規定と不一致であったことを理由に、支払いを拒否する権限を有する。

2、《信用状統一規則》(UCP600)第30条は、“約”、“近似”、“概ね”あるいはこれに類似する用語が、信用状の金額あるいは信用状記載の数量・単価に使用されているときは、係る金額または数量もしくは単価が10%の増減範囲を超えないものと解釈することを許されるものとする、と定められている。したがって、A社が提出した船積書類に記載されている貨物が44,800ヤードであって、10%の限度幅を超えているので、信用状の規定と不一致であり、銀行は支払いを拒絶する権限を有する。

以 上  

※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。