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技術費の捏造による租税回避

1.事 案

 昨年、ある地方都市の国税局(以下、税務署という)は、企業年度関連取引の届出を審査していたところ、ある企業(以下、A社という)の行った技術サービス費の捏造方式による租税回避行為を発見し、直ちに、A社に立入調査を実施し、以下の4つの疑問点が浮上した。

1、2004年から、A社は、毎年A社の中国投資家側及び外国投資家側とそれぞれ技術サポート契約を調印し、中国側と外国側のサービス費の比率はその持分比率と基本的に一致すること

2、技術サービス内容を含め、毎年の契約内容はほとんど変わらないこと

3、A社と中国投資家側との協議書におけるサービス内容に中国投資家側(その出資者がA社の29.29%の持分しか持たず、その他の生産活動を行わない)はA社に優れた製糖工業技術、先進的な管理経験及び市場情報を提供することを記載されていること

4、関連者はいつ、どのようなサービス、トレーニング、先進的な管理経験及び市場情報を提供したか、いつ専門家を派遣し、どのようなサービスを提供したかとの税務署の質問に対して、A社の財務担当の回答が曖昧な点も多く見られたこと

 税務署は、A社は技術サポート契約を捏造し、管理費用を計上し、租税回避行為を行った疑いがあると考え、A社に対して、該当管理と技術サービス費にかかる真実性、必要性と自主取引原則を裏付ける証拠資料を提出するよう求めた。A社が該当費用の正当性を証明する資料を提供できないため、税務署がA社にその租税回避及び企業所得税に抵触するリスクを提示し、勧告した後、A社は、租税回避の事実を認め、税法に基づいて、自ら特別納税の調整を行い、自発調査及び補足納付の方式で税金40.87万元、銀行同期利息5.96万元を納付した。

2.コメント

1、税務署は、企業がその費用支払とコスト計上などに対して真実性、収益性並びに自主取引原則に合致するような証拠資料を提供できない場合には、税法によって調整する権利を有する。

2、中国は2009年、初めて関連者間サービスを移転価格税制の内容として取り入れ、更に2014年、グループ内の労務と管理費の問題について国連に建議書を提出した。BEPS(Base Erosion and Profit Shifting、税源侵食及び所得の移転の意味)の行動計画を実施するため、国家税務総局が2015年3月18日付けの「企業の国外関連者への費用支払に係る企業所得税問題に関する公告」を発表し、末端税務署によるグループ内の労務提供問題の審査を指導する。

3、租税回避の対応として、関連者から受けている支援の内容について明確にし、その支援の対価が合理的なものであることの資料を備え付けておくことが重要となる。

4、税務当局は「実質課税の原則」を重視しており、実態と乖離する形式(契約)は租税回避行為(重いペナルティ)と見なされるリスクがある。

以 上

※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。