提出した辞表を撤回できるか
1、事実経緯
2014年6月1日、A氏は上海のある投資会社(以下、B社という)との間で2016年5月31日までの2年間の労働契約を結んだ。2015年10月25日、A氏は個人の都合で、B社に辞表を提出した。
B社はA氏の辞表を受理後、A氏に引継ぎを求め、2015年11月25日をその最終勤務日として認めた。2015年11月25日昼、A氏は、自分が癌にかかったという誤った思い込みにより辞表を提出したが、病院での再検査で1週間休んだら大丈夫だと医者から指示された。現在、治療期間が満了したので、辞表を撤回し、仕事に復帰したいとB社に電子メールを送ったが、B社よりそれを拒否されたうえ、雇用解除証明、労働手帳及びB社の所有物の返却通知書を送られたため、B社を相手に労働仲裁を起こした。
2、仲裁裁定
労働仲裁委員会は、A氏は法により個人の都合で30日前に労働関係の解消をB社に知らせ、B社もA氏の辞職を受け入れた。現在、A氏の重大な錯誤及び医療(治療)期間満了をもって辞表を撤回するという主張は根拠が不十分であり、且つA氏も「労働契約法」第40条、41条の状況に当たらないため、A氏の辞表撤回、労働関係の回復請求を却下するという旨の裁定を下した。
3、コメント
1.本案のA氏の辞職行為は形成権であり、一旦実施したら、法に決めた重大な誤解など撤回できる状況の存在を除いて、撤回できず、法的な約束力を有し、B社もそれに拘束され、労働契約解消の法的効果をもたらし、A氏の撤回行為は如何なる法的な効力も生じない。
2、仲裁裁決はA氏の辞職行為は有効で、医療期間中の解除制限を受けないことを確認した。
3、労働契約法第37条は、労働者の任意辞職権を定めているが、任意に辞職を撤回できる権利は有しない。
4、法律上、労働者の一方的な解除権に30日の予告期を設けている。その立法の本意は労働者の辞職権を約束すると共に、雇用者に一定の求人募集期間を与え、正常な生産秩序を保障するためである。
以 上
※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。