なぜ遅刻した時間と代休とを相殺することができないか?
1、案件経緯
2017年初頭、労働保障監察機構(以下、労働部門という)は某加工企業(以下、A社という。)の残業代未払いの匿名検挙を受けた。
労働部門は監督員をA社に派遣し、立ち入り検査を行い、その査察によって、A社は民営小規模企業、人事の専門担当者を置かない代わりに、嘱託の会計に兼任させた。従業員は常時勤務時間を取り、残業がほとんど無く、会計は手作業で記録を取り、社長はそれを抜き取りチェックする。勤務記録には毎週月から金までの定時出退勤の記録は無いが、休日出勤時間は詳記されており、土日出勤の従業員が代休を与えられる。A社の社内規則によれば、従業員が3回遅刻したら、代休1日を控除されると明らかになった。そして、監督員はA社の従業員に聞取り、A社の上記の3回遅刻と代休1日とを相殺する規定は、職員代表大会または職員全員による討議の手順を踏まなかったことを発見した。監督員はA社の委任者に次のように指摘した。従業員が遅刻した反則に対して、会社は管理の自主権利を有するが、その根拠とする社内規則は法定手順を経て制定したうえ、その内容が労働保障法律、法規に合致しなければならない。
2、処理結果
監督員の教育を受けたA社は、関連の規則制度を完備し、遅刻で代休を控除された従業員に相応しい補足休暇及びその証明を与えた。
3、コメント
(1)「労働契約法」第四条により、使用者は、労働報酬、勤務時間、休暇休憩、労働安全衛生、福利厚生、従業員研修、労働規律及び労働定額管理など労働者の切実な利害に直接にかかわる規則制度または重大な事項を制定、修正、決定する場合、従業員代表大会または従業員全員と討議し、方案及び意見を徴収し、組合または従業員代表と平等な協議のうえ、確定し、その規則制度及び重大な決定事項を従業員に公示、告知しなくてはならない。労働規律は従業員の切実な利益に関わる重大な規則制度に属し、民主的な手順を経ず制定されたとしても、従業員に拘束力を有しがたい。本案のように、規則制度の制定手順上の合法性は使用者が時々見落としやすいところである。
(2)規則制度の内容も労働保障法律政策に合致しなくてはならない。「労働争議案件審理と法律適用若干問題に関する最高裁の解釈」第十九条により、使用者が民主的手順によって制定した規則制度は、国の法律、行政法規及び政策さえ違反せず、労働者に公示した場合、裁判所が労働争議案件を審議する根拠とすることができる。
(3)使用者は合法、かつ有効な規則制度をもって従業員を管理し、反則行為を処罰することができる。ここでの処罰とは行政処罰ではなく、使用者が反則者に対する懲戒を指すものである。使用者は、給与構成を細分化する方式で従業員を日常管理し、例えば、非固定給与、業績給与、皆勤賞などを設けることによって、従業員の勤務態度を規範し、遅刻、早退、無断欠勤者に皆勤賞を支給せず、厳重な反則情状によって業績給与を減らし、ひいては労働契約を解除する。
以 上
※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。