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労災が定年再雇用者にも適用されるか

 

1、事実経緯

  定年者であるA氏は上海市にある商業専門学校(以下、B校という)に英語教師として採用された。2006年ある日、A氏は退勤で校内の歩道を歩き正面から走ってきた学生とぶつかってしまい、横向きに倒れ、病院に運ばれ、左足の骨折と診断された。

 A氏はB校に労災として善処を求めたが、B校は、A氏とは労働関係(労働契約)ではなく労務関係(臨時雇用)だけを有し、A氏が労災の認定条件に合致しないと拒んだ。そのうえ、A氏が校内で学生にぶつかられ、負傷した事故は他人によって権利を侵害されたため、民事損害賠償を請求することができるが、労災認定を受けられないと考えた。

 

2、裁定、判決

 2006年8月、A氏は区労働局に労災認定を申し入れた。2007年1月、労働局はB校とA氏との間で特殊な労働関係が存在し、A氏の負傷は労災に当たると裁定を下した。

 B校は裁定を不服とし、区政府に行政再審を申し入れたが、区政府は区労働局のA氏に対する労災認定を維持した。

 その後、B校は区地裁に提訴し、A氏に対する労災認定を取消すよう求めた。地裁は、本件の行政裁決を下すための根拠とする、2003年4月25日、上海市労働と社会保障局が公布した「特殊労働関係関連問題に関する通知」は、上海市労働力市場の実情に沿い、実際の問題を処理するために制定した規定として合法性を有し、本案に適用できる。A氏とB校との間で特殊労働関係を形成しており、労働局が労災認定を結論付ける法的な職権を有するとB校の訴求を退けた。

3、コメント

(1)上述の「特殊労働関係関連問題に関する通知」における「特殊労働関係」とは、労働者が労働過程においてほとんど使用者の管理支配を受け入れているが、労働者主体が現行の労働法律に規定された構成条件に合致せず、あるいは労働者が使用者のところで労働に従事すると同時に、別の使用者と様々な形態の労働契約関係を有していることをさす。

使用者は下記の人員を使用したら、特殊労働関係を構成する。

①使用者と協議して社会保険関係者を保留する者

②企業より国の政策に従い解職、生活費を支給される者

③企業より国の政策に従い給与を停止、職を保留される者

④各種専門労務派遣会社の派遣した上海市または外来の従業員

⑤定年者

⑥許可を経ず使用した外来の従業員

(2)現行の「労働契約法」または「労災保険条例」は定年後再雇用者が勤務中負傷した場合、労災に当たるかどうかを特に決めていないが、「労災保険条例」に関する北京市、天津市、重慶市、アモイ市、太原市などによって公布された地方実施細則、規定は定年者再雇用者が勤務中負傷した場合、労災として認定できない。また、勤務中負傷者に対し労使双方の約束によって賠償し、賠償の話し合いが成り立たない場合、法によって救済を求めることなどと決まっている。

(3)現行の2004年8月20日付「上海市労働と社会保障局、上海市局の「上海市労災保険実施弁法」若干問題の実施に関する通知」(以下、通知という。)によれば、上海市における企業は、定年者を採用し、事故が起きた場合、その労災認定、労働能力鑑定及び労災保険待遇に関して、それぞれ「上海市労災保険実施弁法」を適用し、雇用者が支払うと決まって、上記(2)の各地の規定とは明らかに異なっている。因みに、「通知」の有効期限は2021年8月15日まで延長されている。  

以 上

※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事を一部加筆修正したものです。