「特許など知財事件訴訟プロセス若干問題に関する 全人代常務委員会の決定」
全人代常務委員会は、2018年10月26日付「特許など知財事件訴訟プロセス若干問題に関する決定」(以下、「本決定」という)を公布し、2019年1月1日より実施することを決めた。その要点を以下の通り取りまとめます。
1、背景
最近、知的所有権問題は米中貿易摩擦の重大な争点の1つとなっている。中国市場における海賊版の一掃、知的財産権の保護や、外国企業に対する参入障壁の解消を求める海外からの声が高まる中で、中国にとっては世界中の知的財産権重視の機運によってこれまでの技術導入チャネルは先細りになっている。全人代常務委員会は、経済競争力の向上のために知的財産権の保護、技術革新を推進していくと同時に、特許権利侵害など紛争増を予想し、現行の地方裁判所による審理プロセスの弊害を解消するには、裁判審理プロセスを再構築し、特許など知的事件の控訴の審理権を最高裁に集中させることによって、知財事件の裁量幅の不統一など問題の是正、司法の信用力の向上、ビジネス環境の改善に繋がるものとして、「本決定」の公布、実施を決めたと考えられる。
2、決定内容
1)当事者は発明特許、実用新型特許、植物新品種、集積回路図面設計、技術秘密、コンピュータソフトウエア、独占など専門技術の高い知的財産権民事事件第一審判決、裁定に不服、上訴した場合、最高裁が審理する。
2)当事者は特許、植物新品種、集積回路図面設計、技術秘密、コンピュータソフトウエア、独占など専門技術の高い知的財産権行政事件第一審判決、裁定に不服、上訴した場合、最高裁が審理する。
3)法律効力の発効済みの上述事件の第一審判決、裁定、和解書、法による再審の申入れ、控訴などに審判監督プロセスを適用する場合には、最高裁が審理する。最高裁も下級裁判所に再審を命じることができる。
3、コメント
1)「本決定」の実施によって、異なる地方中級裁判所が知財事件の法律適用の差異によって裁判の衝突を引き起こすことを回避できる。
2)「本決定」の実施によって、国内外企業の知財に対する法による保護、事件の審理、判決の公平性がどこまで実現されるか目が離せない。
4、本解釈の適用除外
-
民間に関する規定の適用を主張するとき、人民法院は支持しないものとする。
5、3年訴訟時効の適用可否
- 本解釈施行後に、案件がまだ第一審または第二審の段階にあるときは、本解釈を適用する。本解釈施行前に既に結審したか、または当事者が再審を申し立てたか、または裁判監督手順によって再審が決定された案件については、本解釈を適用しないものとする。
以 上
最近の主要法令
№ |
法 律 名 称 |
施行日 |
1 |
最高裁の「「中華人民共和国民法総則」訴訟時効制度の適用若干問題に関する解釈」」(『重要法規解説』をご参照下さい) |
2018/07/23
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2 |
財政部、国家税務総局の「小型零細企業所得税優遇政策範囲の更なる拡大に関する通知」 |
2018/01/01 |
3 |
財政部、国家税務総局の「ハイテク企業と科学技術型中小企業欠損繰越年限の延長に関する通知」 |
2018/01/01 |
4 |
国務院弁公庁の「輸入拡大、対外貿易均衡発展促進の商務部など部門の意見の転送に関する通知」 |
2018/07/02 |
5 |
工業と情報化部の「中華人民共和国化学品監督管理条例」実施細則 | 2019/01/01 |