労働契約締結時の客観情況変化について
1、事件経緯
A氏は2003年6月23日にB社に入社。2015年6月23日に双方は無期限契約を締結し、A氏はB社の物流部門のカスタマーサービス主管を担当し、具体的に会社の関わるC社プロジェクトを所掌すると取決めた。
2016年3月24日にB社はA氏に「職務調整通知書」を送り、その書面に「貴方が2003年6月23日当社に入社、現在C社プロジェクト付きカスタマーサービス主管を担当している。C社プロジェクトについて当社との契約を更新しないため、そのプロジェクトは2016年3月31日に終了。2016年4月1日より、当社は貴方に下記の職場を提供し、それはある倉庫顧客サービス業務であり、給与福利待遇は変更しない。貴方はもとの職場の引継ぎを終えた後、2016年4月1日午前9時にある倉庫に出勤すること。2016年3月28日午後3時前に書面または電子メールで会社に上述の職場調整を受入れるかどうかを回答すること。貴方が期限を過ぎて会社に回答しない場合、上述の職場調整手配を受入れないと認められる。」と記載されていた。
当日、A氏はB社に会社の勝手な職場調整に応じないと電子メールで送信した。
2016年3月31日にB社はA氏に「労働契約解除に関する通知書」を発送し、その中に「労働契約法」第四十条第三款の規定によって、2016年4月1日より、貴方との労働契約の解除を決定すると書かれている。
2、仲裁、裁判
A氏はB社の決定を不服とし、労働仲裁を申し入れ、B社に不当解雇として、違法解約の賠償責任を負うと求める。
仲裁委員会は、B社が主張する契約締結時に根拠とした客観状況に重大な変化が生じることを理由に一方的に契約を解除することを認めず、A氏の訴求を支持した。
B社は仲裁の裁決を不服とし、地裁に提訴した。裁判所は審理後「労働契約法」第四十条第三款における「客観状況」とは労働契約締結時、予見不可の客観状況、即ち不可効力が発生し、または労働契約の全部または一部の履行不可をもたらした状況を指す。B社はA氏と2015年6月23日に労働契約を締結した時には、会社とC社との間のサービス契約が2016年3月に期限満了であると明らかに承知しており、B社はC社と契約を更新しない可能性のある状況を予見できたはずである。故に、C社がB社とサービス契約を更新しないことは、B社がA氏と契約を締結すると同時に、予見不可の客観状況に属しないものとする。従って、裁判所は最終的にB社がA氏との契約を解除した行為は違法に当たり、違法解約の賠償責任を負うべきと認定した。
3、コメント
1)現実に、雇用者が主観的に雇用意思を変える可能性があるにもかかわらず、客観状況に変化が生じることを装える。本案のように、雇用者はある人だけを特定し、「客観状況」に重大な変化が生じることを理由に、最終的に一方的に解約に踏み切ったことによって不当解雇と認定されたケースが少なくない。司法実務上、労働契約解除時根拠とする「状況変化」を認定する要求が厳しい。雇用者は「労働契約法」第四十条第三款における「客観状況」の引用に慎重さを求められる。
2)本案のように、ある時点で必然に生じる変化について、労働契約の双方が予見すべき状況に当たり、双方は労働契約を締結する時にはその状況の処理を取り決め、または労働契約の期間の短縮によって、契約期限満了後に状況を変え、または状況変化後、双方が如何に労働契約における権利義務の処置を明確に約束することができる。もし、双方がそれに必ず生じる状況変化に対応を講じない場合には、双方が契約を締結する同時に、たとえそのような状況が現れたとしても、労働契約の履行に影響されないと認める。従って、雇用者はそのような状況を「労働契約締結時に根拠とした客観状況に重大な変化が生じる」理由としてはならない。
以 上