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個人口座への公金振り込みに要注意

一、事件経緯

 2020年4月、無錫市税務局第一稽査局(以下、税務局という)は、無錫市華発科技有限公司(以下、華発公司という)に立ち入り調査を行い、華発公司が2017年から2018年までに帳簿外に電気自動車及び部品の販売代金を取得した他、個人口座を通じて販売代金計40076388.35元を受け取り、そのうち計38513838.35元は未記帳で、納税を申告していないことについて摘発した。

 

二、処罰

 税務局は華発公司に対し、増値税計5509768.95元、企業所得税計439662.71元をそれぞれ追納したうえ、華発公司が廃棄物収入を隠し、増値税専用領収書を虚偽発行して帳簿に収入を少なくし、支出を多くした行為は脱税を構成しているため、税務行政処罰事項告知書(錫税一稽罰告(2020)76号)を華発公司に送達し、増値税、企業所得税の追納に当たる50%の罰金を課し、計2974715.87元とする。

 

三、注意点

1、各地での個人口座への公金振込への査察及び懲罰

 華発公司のケースに限らず、北京のある電子株式有限会社の法人代表者は個人口座で取引先からの代金を受け取り、同社が増値税の377,286.46元、企業所得税101,515.75元を過少納付したため、それぞれ0.5倍の罰金を科して、合計239,401.11元とした。また、雲南省国税査察局は雲南のある製薬企業に対して税務検査を行い、その送達した税務検査通知書の中で、当該会社が提出すべき資料に会社の法定代表者等の主要責任者及び財務担当者個人のすべての銀行口座と明細を含まれると明記している。

2、金融機関と税務、反マネーロンダリング機構との協力

(1)2020年に入り、銀行、税務の情報はすでに共有化しており、経営者の個人口座と会社の口座との間の頻繁な資金取引に対してすべて金融機構、税務、反マネーロンダリング機構の監視下に置かれて、脱税など不正行為が見付かれば、厳しく罰せられる。

(2)国税局「金三」税務システムは企業の経営に異常があるか、領収書、申告データが真実かどうか、システムは自動的にビックデータを対比分析し、動態的監視下で、例えば税務率が低いといった異常があると、システムは自動的に警告し、誰も告発しなくても、税務署によって直ちに察知される。

(3)税務部門はすでに最新の税金分類コードと納税者識別番号のビッグデータ監視メカニズムを構築し、過去、領収書を虚偽発行したことを識別される可能性があり、同時に高給、多ルート、多種類の収入は厳しく検査に直面される。

3、銀行による多額現金の管理試行

 長い間にわたり多くの腐敗、脱税、マネーロンダリングなどの違法活動は金融監督の弱い穴を潜った。その穴を埋めるために、 2020年5月13日、中央銀行は「多額の現金管理試行に関する中国人民銀行の通知」(銀發【2020】105号)を発表し、河北省、浙江省、深市で多額の現金管理試行を実施することを決定した。試行期間は2年となり、河北省で2020年7月から、浙江省、深圳市で2020年10月から、段階的に試行が行われる。同時に公布された「多額現金管理先行試案」(以下、方案という)では、銀行など金融機関の多額の現金業務を全面的に規範化し、多額の現金総合管理措置を模索する主要任務を定めている。方案は多額の現金出入金業務管理範囲を明確にする。試行銀行の調査によると、各地の公的口座の管理金額の起点はすべて50万元で、私的口座の管理金額の起点は河北省10万元、浙江省30万元、深圳市20万元である。

 現在、企業情報のオンライン照合・審査システムの運営に加え、多額の現金管理の試行が実施され、規定を超える多額の現金業務情報が直接銀行から関連部門に転送されるので、これから公的口座から個人口座へ、または個人口座間の送金に注意する必要である。

 もちろん、公金を個人口座に送金することはすべて非合法ではなく、従業員への給料支給、従業員の旅費精算、個人への労務費支払い、自然人への購買、個人借金の返済、個人賠償金の支払い、株主利益配当、個人独資企業利益配分の8つの状況に当たる送金には問題がない。

 

重要法規解説

 

「中華人民共和国民法典」

 

 13期全国人民代表大会3回会議は2020年5月28日に「中華人民共和国民法典」(以下、民法典という)を採択した。民法典は7編、1260条で、各編は総則、物権、契約、人格権、婚姻家庭、相続、権利侵害責任と付則となり、2021年1月1日から施行される。その概要を下の通り取りまとめしてみます。

 

一、背景

 大陸法系に属する中国は、1956年、1964年の民法二草案に続き、改革開放後、1984年民法第三と第四の草案ができ、2002年に新しい民法草案が完成し、全国人民代表大会で審議された。中国の現行の民事法律は「民法通則」の支配下で、「契約法」、「物権法」、「権利侵害責任法」、「担保法」、「婚姻法」、「相続法」などの単独法律が整備されているが、矛盾が多く、一連の司法解釈に加えて、このような異常かつ雑多さに直面し、社会状況、経済の発展の要求を満たすことができない。民法典を編纂するのは中国の民法学界の切実な願望と呼びかけで、これまでの民事法律間の矛盾と衝突を解消して、民事関係の良法による善治を実現するためである。これは民法典を編纂する客観的基礎である。現在、経済発展は新たな常態に入り、民法典の公布、施行は社会制度の必要、国家管理の推進、経済の質の高い発展の要求及び民衆の利益のより良い保障を含む四つの現実的な需要があり、中国の立法史には一里塚の意義があることは言うまでもない。

 

二、各編の主な内容

(一)総則編

 「総則」では、民事活動に従わなければならない基本原則と一般的規則を規定し、民法典各分編を統括する。民事権利及びその他の合法的権益は法律によって保護され、平等、自由意志、公平、誠実と信用、法律遵守と公序良俗などの民法基本原則を確立した。

 革新的な国家を創るために、民法典は知的財産権に対して概括的な規定を行い、各単行の知的財産権の法律を統括する。また、データ、ネットワーク上の仮想財産の保護については、原則として規定されている。さらに、民事法律行為の定義、成立、形式と発効時間、意思表示の発効、方式、撤回、解釈、民事法律行為を規定する効力制度、代理の適用範囲、効力、類型などの代理制度、訴訟時効の期間及び起算、法的効果、訴訟時効の中止、中断、計算単位、起算、終了、順延などが決められている。

(二)物権編

 物権は民事主体が法により享有する重要財産権である。民法典は、すべての人は自分の不動産又は動産に対して法により占有、使用、収益及び処分の権利を享有する。住宅建設用地使用権の期限が満了した場合、自動更新期間を明確にし、更新費用の納付または減免は、法律、行政法規の規定に従って行う。担保物権制度をさらに充実させ、担保物権の意味、適用範囲、担保範囲等の共通規則及び抵当権、質権及び留置権の具体的なルールを明確にしており、抵当契約と質権設定契約の一般条項を簡略化する。

(三)合同编

 契約の締結、効力、履行、保全、譲渡、終止、違約責任などの一般的な規則を規定し、電子契約の締結規則を完備し、予約契約の具体的な規定を追加し、書式条項制度などの契約締結制度を完備し、契約効力制度を健全化する。契約履行制度を完備し、グリーン原則を実行し、当事者が契約履行中に資源の浪費、環境汚染、生態破壊を避けるべきと規定している。同時に、司法の実践経験を総括した上で、情勢変更制度を追加した。代位権、取消権などの契約保全制度を完備し、債権者への保護をさらに強化し、債権譲渡、債務移転制度を細分化し、債務弁済充当規則を追加し、契約解除などの契約終止制度を完備した現行の担保法の規定を吸収することにより、違約責任制度を完備する。また、検収期限の規定と所有権留保規則などを見直すことによって、売買契約を補足した。

(四)人格権編

 現行の関連法律法規と司法解釈の基礎の上で、民事法律規範の角度から自然人とその他の民事主体人格権の内容、境界と保護方式を規定し、立法と司法の実践経験を総括した上で、セクハラの認定基準及び機関、企業、学校などの単位でセクハラ防止と制止の義務、プライバシー権と個人情報の保護、個人情報の定義、個人情報を処理する際の原則と条件を明確にしている。プライバシーの定義を定め、他人のプライバシー権を侵害することを禁止する具体的な行為を明確にしている。

(五)婚姻家庭編

省略

(六)相続編

省略

(七)権利侵害責任編

 本篇は、権利侵害責任の帰責原則、多数者の権利侵害の責任負担、侵害責任の軽減または免除などの一般規則、人身権利と財産権を侵害する賠償規則、精神損害賠償規則などのほか、知的財産権の保護を強化し、侵害の違法コストを高めるために、他人の知的財産権を故意に侵害し、情状が重大である場合、侵害された人は相応の懲罰的賠償を請求する権利を有し、製品の生販、自動車交通事故、医療、環境汚染と生態破壊、高度危険、飼育動物、建築物と物件などの分野における侵害責任規則、また、現行の権利侵害責任法の下で、生産者、販売者が欠陥製品をリコールする責任を負い、生産者、販売者は被害者に対して必要な費用を負担することを決められている。

(八)付則

 民法典の最後の部分の「付則」は、民法典と婚姻法、相続法、民法通則、養育法、担保法、契約法、物権法、権利侵害責任法、民法総則との関係を明確にし、民法典が施行された後、上記の民事単行法律が代替され、同時に廃止することを規定している。

 

主要法令

法  律  名  称

施行日

1

全国人民代表大会の「中華人民共和国民法典」(『重要法規解説』をご参照下さい)

2021/01/01

2

最高裁の「法によるコロナウイルス疫病民事事件審理善処若干問題に関する指導意見」

2020/05/13

3

最高裁の「法によるコロナウイルス疫病民事事件審理善処若干問題に関する指導意見(二)」

2020/05/15

4

国家外為管理局の「貿易新業態発展の支持に関する通知」

2020/05/20