社員は就業規則に違反し交通事故で労災認定ができるか
1 事件経緯
2018年7月26日午前4時30分ごろ、A氏は三輪電動車を運転して交通事故を起こし、救急がきかず死亡した。2018年8月10日交通警察は道路交通事故認定書を発行し、A氏は事故責任を負わないと認定した。
2 労災認定
2018年12月3日、A氏の親族は区人力資源・社会保障局(以下「区人社局」という)に労働災害認定申請を提出した。2019年2月13日、区人社局は「労災認定不許可決定書」を発行した。2019年3月6日、A氏の親族は区人社局の「労災認定不許可決定書」を不服とし、区政府に行政再審査を提起した。区政府は区人社局の決定書を取り消した。
B社はA氏が無断で職場を離れ、交通事故を起こしたため労災と認定すべきではないとして、区政府の行政再審議の決定を不服とし、中級裁判所に行政訴訟を提起した。
3 一審判決
中級裁判所は、「労災保険条例」の立法目的は、業務による事故傷害を負い、または病気になった従業員が医療救治と経済補償を受けることを旨とする、弱者層の負傷従業員の合法的権益を守るためのものであり、合法権益を制限することではない。社員が職場の労働規律を守らず、就業規則に違反したことは、労災保険待遇を享受することとは異なる法律関係にあり、両者には必然的な関係がなく、社員が就業規則に違反したことにより、当然に労災保険待遇を失うとは思えない。
区人社局が無断で職場を離れて家に帰ったことだけをもって、A氏が負った事故傷害は労災に該当しないと認定したことは法律適用の錯誤に属し、区政府は法律適用の間違いを理由に区人社局の「労災決定書を認めない」旨の決定を取り消すことは、妥当であると判断し、B社の訴求を退けた。
4 二審判決
B社は中級裁の判決を不服として高裁に告訴した。A氏は規則制度に従って通勤しなかったので、合理的な通勤時間にあるとは認めず、無断で職場を離れた行為による結果は控訴人が負うべきではないと主張し、原審判決の取り消し、再審または法による改審を求めた。
高裁は「労災保険条例」第十九条第二項の規定により、職員またはその近親族は労災と認めるが、使用者が労災とは認めない場合、使用者が挙証責任を負うべきである。上告人は、行政再審査と原審の裁判でA氏は出勤時にタイムカード打刻が必要であるとし、それをプロジェクト部の勤務管理員がチェック、月末精算時には従業員とともに確認し、従業員は勤務記録表にサインすることとなっているが、その表はもう紛失したと陳述した。上告人プロジェクトマネージャーは区人社局の問い合わせに対し、工事現場ではA氏を含め全員がタイムカード打刻をすると答えた。上告人はA氏が労災になることを否定したが、A氏の職務性質、勤務時間を手配した証明書を提出できなかったため、挙証不可の法的結果を負担しなければならない。
原審判決は上告人が区政府による再審決定の取り消しを求めた訴訟請求を却下し、不当ではなかった。区人社局は調査に職責を尽くした後、明らかな事実に基づいて、法律によってA氏が受けた傷害は労災であるかどうかを認定しなければならない。上告人の控訴理由と請求は、法により成立できなくなるため、上告を棄却し、原審を維持したと言い渡された。
5 コメント
(1)実務上、使用者にはよく誤った認識があり、すなわち、労働者が就業規則に反して傷害事故を起こした場合、労働災害と認定できないと考えている。 それは大きな落とし穴である。法律に決められている特例を除き、すべて労災と認定される。本案は使用者の注意を引き起こすものであり、従業員の安全事故の管理と予防を強化し、事前に対策を立ててほしい。
(2)労災は無過失責任原則を実行し、故意に犯罪、飲酒または麻薬、自傷などの特殊な状況を証明する証拠がある以外、労働者は勤務期間中に社内規則の違反による傷害事故であっても労災と認定するものであり、また、使用者も、労災認定と規則違反処理との異なる法律範疇を正しく区別しなければならない。一方、従業員の合法的権益を保護するために、負傷した従業員に早めに治療を与え、労災を申告して、労災保険の待遇を受けることができるようにする必要がある。他方、使用者は、規則制度に著しく違反した従業員に対しては、一定の処罰を行い、関連規定を完備し、安全管理を強化し、未然に防止しなくてはならない。
重要法規解説
「六穏」・「六保」のためのサービス・「放管服」行政改革の最善に関する国務院弁公庁の意見)
2021年4月15日国務院弁公庁は「「六穏」・「六保」のためのサービス・「放管服」行政改革の最善に関する意見」(以下「意見」という)を配布し、同日より実施し、24条によって構成される「意見」の趣旨を以下の通り取り纏めます。
1 背景
現在の感染症のパンデミックの不確実性は依然として高く、国際政治経済環境はより複雑である中で中国の経済の安定回復の基礎はまだ不安定で、中小企業と個人の商工業者は様々な困難に直面し、企業のコスト上昇が速く、就職の圧力は大きい。そのような山積の難問に取組む為に国務院弁公庁は「六穏」・「六保」、「放管服」の方針を打ち出し、政府機能の転換を加速し、公平競争を着実に維持し、経済社会の持続的健全な発展を図ろうとする。
2 主な内容
(1)職業参入許可資格数の整理、削減、国家職業資格目録を引き続き動的に最適化する。職業技能訓練補助金標準の動的調整メカニズムを確立する。大卒、退役軍人、帰郷農民工などの創業就業支援政策を実施し、整備する。
(2)税金の優遇政策の処理の手続きを簡素化し、金融、社保などの優遇政策のカバー度合い、正確性と有効性を高める。行政機関と特定の仲介機構との癒着を厳しく取り締まる。企業の審査・承認サービスを最適化する。
(3)投資審査の効率を持続的に高め、投資プロジェクトの建設申請手続きを簡略化し、工事建設プロジェクトの事前審査、施工図審査などの一環を規範化する。
(4)業界の独占と地方保護の打破に力を入れ、消費者を制限する行政的規定を撤廃し、市場性の高い新技術と新製品に対して、国の基準を優先的に適用し許認可を早め、内販と輸出製品の「同一品質」の推進を加速する
(5)外国投資環境を持続的に改善し、外商投資参入前の国民待遇とネガティブリスト管理制度を完備させる。輸出入商品検査監督モデルの改革を推進する。港の有料項目を削減し、リスト制度を実施する。
(6)効果的な監督管理を行政簡素化の必要な保障として「インターネット+監督管理」などの方式を充実させ、行政法執行を厳格に規範化し、行政裁量権基準制度の確立を推進する。
注1:「六穏」とは、就業、金融、対外貿易、外資導入、投資環境、市場予想の安定のこと。
注2:「六保」とは、就業、民生、規制緩和、食料エネルギー、産業チェーン供給、政府末端組織の運営の確保のこと。
注3:「放管服」とは、中央政府が行政権を下放し、参入のハードルを下げ、監督管理を創新し、公平な競争を促進し、効率的なサービスを提供し、便利なビジネス環境を作ること。
主要法令
法令名称 |
施行日 |
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1 |
国務院弁公庁「「六穏」・「六保」のためのサービス・「放管服」行政改革の最善に関する意見」 |
2021/4/15 |
2 |
商務部・国家発展改革委員会「商品市場の最適化・アップグレード特別行動計画(2021-2025)の配布に関する通知」 |
2021/5/11 |
3 |
国務院弁公庁「危険廃棄物の管理強化と処理能力の改革実施方案の配布に関する通知」 |
2021/5/11 |
4 |
国家知識産権局・公安部「知的財産権保護の協力強化に関する意見」 |
2021/5/20 |
5 |
国家市場監督管理局「市場監督管理行政執法責任制規定」 |
2021/7/15 |
6 |
国家知識産権局「改正後特許法関連審査業務処理施行に関する暫定弁法」 |
2021/6/1 |