会社は社員との労働関係を解除出来るか
本案の焦点は、労働者の罹病が規定の医療期間を過ぎても職場に復帰できない場合、雇用者はその労働者と労働関係を解除できるかどうかです。
一、 事実関係
李氏(以下、社員という)は2009年7月外資企業(以下、会社という)との間で、2年間の労働契約を結んだ。社員は品質管理を担当し、月給2千元のほかに業績賞与も毎月支給されるという。
2010年2月、会社の手配した定期健康診断で、社員は慢性疾病と診断され、入院治療を受けたが、仕事復帰はできず自宅の療養が必要であるとされた。
2010年6月、会社は社員が規定の医療期間を過ぎても出勤できないことを理由として、30日繰り上げて書面で社員に労働解除を通告し、離職の手続きを求めた。社員は通告を受けた後、持病で正常に出勤できないことを理由に会社より労働契約を解除されたことが非人道的として交渉したが、会社は受入れなかった。
社員は労働仲裁を申請し、会社の出した労働契約の解除通知を撤回し、労働関係の回復及び継続雇用を要求した。
二、 仲裁裁決
労働仲裁委員会は、社員の提訴を受理した後、社員の罹病が規定の医療期間を過ぎても職場に復帰出来ない場合、会社は労働契約法の関係規定に基づいて社員との労働契約の解除が出来ると裁決した。社員が労働関係の回復を求めるには法的な根拠が乏しいという理由で社員の請求を認めない裁決を下した。
三、 法律根拠
中国労働契約法第四十条の規定により、雇用者は30日を繰り上げて書面で労働者に通告するか、或は別途労働者に1ヶ月分の給料を支払えば労働契約を解除することができる。
四、 コメント
- 本案の会社は上記労働契約法第四十条の規定に基づいて、社員は罹病で規定の医療期間を超過し、原職場に復帰できず、且つ会社の手配した別の仕事にも従事出来ない情況のもとで労働契約を解除した。
- 会社は規定に基づいて社員の労働契約を解除し、同時に社員に関係費用を支払ったため、仲裁が社員の請求を支持しないという裁決に繋がったと言えよう。
※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事です。