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最高裁の海上貨物運送代理紛争案件の審理若干問題に関する規定

 最高裁判所は2012年3月18日付「最高裁の海上貨物運代理紛争案件の審理若干問題に関する規定」「以下、「規定」という」を公布し、2012年5月1日より実施する。本稿では実務上その概要を述べます。

一、背景

貨物運送代理市場の開放に伴い、貨物運送代理企業は激増し、市場は玉石混合の状況に陥り、秩序ある市場競争と業界の正常な発展は失われた。貨物運送代理企業のルール違反によって、貨物運送代理の紛争は増加し、裁判所に持ち込まれた案件も増えてきた。一方、民法通則、契約法など現行法律規定は原則しかなく、各海事裁判所及びその上下級裁判所の間で如何に法律を適用すべきか認識がまちまちであり、裁判尺度も統一ではないという問題を解決するために最高裁は規定を制定した。

二、調整対象

規定は貨物運送代理企業が委託人より委託された海上貨物運送と関連する貨物運送代理業務の処理上に発生した五つ種類の紛争に適用される。

1、 船腹の申込、通関、検査申込、検疫申込、保険サービスの提供によって生じた紛争

2、 貨物梱包、貨物積込監督、貨物陸揚監督、コンテナ積卸、仕分け、積替えサービスの提供によって発生した紛争

3、 船荷証券の作成、交付、費用決済によって発生した紛争

4、 倉庫、陸上運送サービスの提供によって発生した紛争

5、 その他海上貨物運送代理事務の処理によって発生した紛争

三、 法律適用

貨物運送代理企業は経営範囲が広く、その取扱う海上輸送代理業務において委託人との間に多種類の法律関係を形成した可能性があるため、規定では裁判所は海上貨物運送代理紛争を審理し、貨物運送代理企業が海上貨物運送代理業務の処理で委託人との間で形成した代理、輸送、倉庫など異なる法律関係を認定する場合、それぞれ関連する法律規定を適用しなければならない。

四、典型的な問題の処理

1、貨物運送代理業務の中で委託関係の再委託をどう認定すべきかについて、規定では再委託の禁止を原則に、委託の再転を厳格に控えるという司法政策を取る。

2、貨物運送代理企業が注目している船荷証券を差押えることが出来るか否かの問題について、規定では貨物運送企業が同時抗弁権を行使する条件を満たした場合は船荷証券を差押えることが出来るが、国際貿易の正常な秩序に対する重大な影響のある船荷証券など運送証憑の差押えを禁じることを明確に決めた。

3、FOB貿易条件下で、貨物運送代理企業は国内売り手と国外買い手より要求される船荷証券の引渡しに対してどちらへ渡すべきかという実務上争議が多い問題について、規定では貨物所有者の利益を守る司法政策を取り、貨物運送代理企業が実際に貨物をデリバリする売り手に船荷証券を渡すべきことを明確に決めた。

4、規定では中国契約法における委託契約の規定によって海上貨物運送代理契約紛争案件を審理する際の過失推定原則を採用し、貨物運送代理企業がその過失のないことに対して然るべき挙証責任を負わなければならないことを明確に決めた。

5、貨物運送代理企業は自社の利益を追求する為に、貨物輸送の資質を持たず自社船のない運送人に運送させ、国務院の自社船のない運送人の管理規定に違反するだけでなく、貨物利益を損なう可能性のある問題について、規定では貨物運送代理企業がその不当な運送人選任に対して然るべき賠償責任を負うことを明確に決めた。

6、規定では裁判所は案件審理中、自社船のない運送業務経営資格を持たない貨物輸送代理企業が「中華人民共和国国際海運条例」に違反し、自己の名義で船荷証券、運送証憑あるいはその他の運送証憑を発行したことを発見した場合、関係交通主管部門に処罰するよう司法建議をしなければならないことを明確に示した。

五、終わり

現代サービス業を発展させる国家政策が確立するに連れて、貨物運送市場は新たな発展転機を迎えてきた。一方、それとは裏腹に貨物運送代理市場のあるべき秩序を無視し、ルールに違反してきた企業も少なくない。今回最高裁はその規定の公布、実施によって果たして貨物運送代理業界における一部貨物運送代理企業の違法操作の取締、貨物所有者の財産権益の保護及び秩序のある貨物運送代理市場の回復ができるかどうか注目したい。

 

新主要法令

法  律  名  称

施行日

1

最高裁の海上貨物運送代理紛争案件の審理若干問題に関する規定(『重要法規解説』をご参照下さい)

2012/05/01

2

税関総署の来料加工企業の法人企業形態転換輸入設備税収に関する問題

2012/02/06

3

国家食品薬品監督管理局の保健食品命名規定の実施及び命名指南関係問題に関する通知

2012/03/20

4

国家食品薬品監督管理局の輸入食品海外生産企業登録管理規定

2012/05/01

5

国家知識産権局の特許実施強制許可弁法

2012/05/01

6

国家知識産権局の特許標識標注弁法

2012/05/01

 ※本稿は、当事務所でアドバイザー契約をしている董弁護士の事務所で発行されている記事です